こんにちは。キャブたつです。
この言葉を聞いてまず、中国の「1を聞いて10を知る」ということわざを思い出す人が多いのではないでしょうか。このことわざは、物事の一部を聞いただけで、全体像を理解できる聡明な人をたとえた言葉です。話し手がとある話を話そうと思っていて、1/10しか喋っていないのに、聞き手が残りの9/10を先に理解してしまう。これがこのことわざが生まれた状況です。
一方で、私が今回話す、「1を知って10を知る」というのは、1の事実を聞いて(知って)、概念を理解し、その概念が共通するものを10考え出せる。というものです。
私が挙げた今回の哲学は、そのことわざとは全く異なる意味合いを持ちます。なので今回は頭の片隅においておいてください。
この哲学(スキル)は、現社会を生き抜くビジネスパーソンから、これから社会に出る学生にとって特に心に持っていてほしい意義を含んでいます。またそうでなくともこれからの人生を豊かに生きたいすべての人に役立つ哲学であると私は確信しています。
以降、「1を知って10を知る」とはどういう思考なのか、またどんなスキルが必要なのか、と、なぜすべての人に役立つスキルであると思うのか、その理由を私の体験を交えて詳しく説明していきたいと思います。
「1を知って10を知る」とは抽象化と転用の思考
まず最初に、この「1を知って10を知る」の思考とは、冒頭でも述べた通り、1を聞いて(知って)、概念を理解し、その概念が共通するものを10考え出す。というものです。
これに具体的にどのようなスキルが必要かというと2つあると考えます。1つめは具体的な1の事実・事象から、抽象的な概念を抽出するスキル。2つめは、それを自身の目的に沿った結論に落とし込める・転用できるスキルです。
この説明自体がかなり抽象的なので、具体例を挙げて、思考の手順およびそのスキルについて解説します。
手順:
①まず目的をたてる
目的:就きたい仕事を探す
②事実を1つ取り上げる
事実:私は紺色(ネイビー)が好き
③抽象化する(本質を見極める・概念を理解する)
抽象化:身にまとっていても目立たない色であり多くの人が好きな色だから
→みんなから好かれたいが、目立ちたくない
→だれからも嫌われたくないという欲求がある。
④目的に沿った形に落とし込む
転用:政治家といった敵味方がはっきりしている世界ではなく、縁の下の力持ちということわざのように、人前には出ないが、人の生活に根差した仕事をがしたい。
この様に、とある自分の事実から、自分の目的に沿った結論を得ることができました。ここで使っているスキルが抽象化と転用のスキルです。
この抽象化と転用の思考法の優れたところは、目的が変われば、異なる結論を得ることができるというところです。
具体的に説明しますと、先ほどの①で目的を、自分の弱点を探す、にしてみます。
すると、先ほどの①~④は次の様にできます。
①まず目的をたてる
目的:自分の弱点を探す (新)
②事実を1つ取り上げる
事実:私は紺色(ネイビー)が好き
③抽象化する(本質を見極める・概念を理解する)
抽象化:身にまとっていても目立たない色であり多くの人が好きな色だから
→みんなから好かれたいが、目立ちたくない
→だれからも嫌われたくないという欲求がある。(そのまま)
④目的に沿った形に落とし込む
転用:私の弱点の一つは、精神的な苦痛に弱いところである。(新)
以上の様にして、目的を変えることによって、異なる結論を得ることができました。
同様にして、また別の目的をたてれば、②から得られた③はそのままに、新しい結論を得ることができます。
ここまで説明すれば、みなさんも「1を知って10を知る」という意味をお分かりいただけたかと思います。つまりは、抽象化によって見極めた概念や本質があるからこそ、1つの事実から10の結論を得ることができるということなのです。
ここで大事なことは、その概念や本質というものをどこまで汎用的なものにできるか。ということです。理由は、その汎用性の高い低いによって、1の事実からどれだけ多くの異なる結論が得られるかを左右するからです。
たとえば上の例で、抽象化によって得られた自分の本質が、目立ちたくない。だけだったら、自分の就きたい仕事が考えられても、自分の弱点はわかりようがありません。
よって、この思考法においては、この抽象化のスキル、いうなれば、深堀りのスキルががもっとも大事になってくるわけです。
この抽象化のスキルの向上のためには、なにより思考の量がものを言うと考えています。思考法ができようになるための近道はないので、日々継続して行ってみるのが良いと思います。
なにより、形に残すことが、忘れることによる損失を防ぐ上でとても大切です。よって、ノートを使ったり、マインドマップを活用して可視化してみてみると、経験値は格段に増えると言えます。私は手軽さや見た目のわかりやすさを重視して、マインドマップを利用しています。
今回はこの抽象化の方法論を述べたり、抽象化スキルを向上させるための投稿ではないため、申し訳ないですが、さらなる説明についてはここで割愛します。
抽象化の具体的な方法については、2019年最も売れたビジネス書である前田祐二さん著「メモの魔力」にわかりやすく掲載されているので、そちらをご一読していただくとよいと思います。前田さんはメモを通してこの抽象化スキルを身に着け、自分の軸を見つけたり、新しいアイデアを創りだすことができると述べています。
そして次に、なぜその思考によって、人生を豊かに生きることができるのかを説明していきたいと思います。
人生を豊かに生きたい人にとって大事だと思う理由
なぜあらゆる人が豊かになるうえで大事な思想・スキルであると思うのか、その理由は大きく3つあると考えています。
・想像力によって価値を創出することが今後の社会人に求められるから
・コミュニケーションの質を高め、人間関係をよくすることができるから
・自己分析ができ、自分の人生の軸を見つけることができるから
次にこの3つについてそれぞれ説明していきます。
想像力によって価値を創出することが今後の社会人に求められる
私は、日々ニュースを見たり、エンジニアとして働いている中で、以下のような疑問を持っていました。
「今はコンピューターの発展によって、機械的な単純作業は人がやる必要はなくなりつつあるようだ。銀行業も徐々にリストラが始まっているし。記録・記憶はコンピューターに任せればよい。したがって、これからのビジネスパーソンは単純作業によらず、想像力を生かして新価値を創出していかなければならないだろう。でも想像力ってどうやったら身に着くのだろう?」
このような疑問を持たれている方は、私以外にも少なからず存在していると思います。そして実際に、このロボットやコンピューターによる、単純作業の代替は、最近さらに加速してきていると感じます。たとえば、スーパーなどではセルフレジを設置するお店が増えてきたり、上でも挙げた銀行業のリストラ、工場などでの自動運搬ロボットの導入などがそうです。私が働いている自動車業界でも、今後は自動運転のシステムの導入により、バスやタクシーも無人になる時代が徐々にですが、確実に来るものと思われます。
そうなった場合に、人は今の職を奪われ、行き場を失うことになります。つまり、ロボットやコンピューターに代替されない、人にしかできないことが仕事として残ることになります。では人にしかできないこととはなにか。それこそが想像力を働かせた新価値創造というものだと考えます。
新価値ってなに?と思われるかもしれませんが、答えは単純で、「今には無い、多くの人が求める価値観」のことです。たとえば、昔は車が出す排気ガスなど気にしていなかった時もありました。しかし今ではEVが売れているように、「エコである」ということを人々は求めるようになってきました。これが新価値です。
その新価値というものは、ロボットやコンピューターには生み出すことができません。なぜならば、それらのアルゴリズムはすべて人の手でプログラミングされており、決まった動きしかすることができないから、そして最大の理由は、人の感情を完全に理解することができないからです。よく感情で人は動くといいますが、それは人が求める価値観というのもまた感情の要素があるからなのです。
さて、その新価値を生み出す想像力はどうしたら身に着くものでしょうか。
それこそが私が先ほど説明した、「1を知って10を知る」という思考が役に立ちます。目的を、新しいサービスや製品のアイデアを出すとし、事実を、今売れている製品とすれば、人がなぜその製品を買うのか、という心理がわかります。この心理は、人の感情がかわらない限り不変のものなので、それと将来考えられる時代背景とマッチした製品として転用すれば、目的を達成することができます。またマインドマップなどで形に残すことにより、自身の経験として今後、活用していくことができます。そしてこれを繰り返すことによって、想像力というものを身に着けることができるようになると考えています。
まとめますと、先ほど説明したように、人々の労働における新価値想像の必要性は今後どんどん大きくなっていくと考えられます。その中で、この抽象化と転用のスキルと言うものは大きく役に立ちます。なので、今後仕事で成功したいと思うビジネスパーソンの方たちには、ぜひこの力を身に着けてもらいたいと思います。仕事で成功すれば、経済的にも社会的にも豊かになり、きっと素敵な人生が送れるはずです。
コミュニケーションの質を高め、人間関係を良くすることができる
これは、「1を知って10を知る」の副産物的なメリットであると考えています。
この思考の対象を、他人の行動や言動にあてはめたときに、なぜその人はそういう行動をしたのか、そういう発言をしたのかが仮説として得られます。そして特定の人の言葉や言動といったサンプルは日常で多分に得られることと思いますので、それらに対して、多くの仮説を立てることができます。そして、その仮説で日々実証を繰り返すうちに、その人は、こういう思想をもっているんだな、こんな性格の人なんだなと理解することができるようになります。
そうすれば、その人との接し方もわかるようになり、過度に自分の行動に気を使う必要がなくなってきます。またこんなプレゼントがよろこばれるだろうなとかも考えることができます。これが対人関係におけるこの思考法のメリットです。
メリットと言っておりますが、実はコニミュケーションが上手な人はこの思考をたくさんしています。そしてどんな人もこの抽象化と転用を気づかないうちに繰り返してコミニュケーションをとっているのです。この機会にさらに意識してやってみると、友人の気づかなかった一面に気づけるかもしれません。
また自分自身に目を向けてみると、トークスキルの向上というメリットを得ることができます。これがどうしてかというと、この抽象と転用の思考を繰り返すうちに、自然と、具体例を抽象化することと、概念から具体例を考えることができるようになっているからです。具体的になにができるようになるかという例を示します。
ビジネスシーンなら、
・抽象的な話から、具体例を提示して相手に分かりやすく説明することができます。
・会議などの情報を、要約して短い時間で伝えることができます。
日常会話なら、
・たとえつっこみやたとえ話がうまくなります
・観た映画や読んだ小説を、簡潔に伝えられるようになります。
抽象化して、これってつまり~や、具体化して、これにもこの概念があてはめることができると言った思考を繰り返すうちに、具体と抽象の境目をはっきりと認識することができるようになってきます。それによって、相手のニーズにあわせた抽象度で話をすることができたり、自分のボキャブラリーにある情報から、たとえば~という話をすることができるようになってきます。
このようなビジネスシーンや日常においてこのようなトークスキルの上達によって、私たちは人を惹きつけられる話術を身に着けることができると言えます。人を惹きつけられる人は、まわりに多くの友人や協力者がうまれます。そういう人たちに囲まれていれば、あたらしい発想やアイデアに出会う機会は自然と増えるようになり、さらに自分の思考を深めることができます。またビジネスマンは上司からの評価もきっと上がるでしょう。
そして他者からの理解を得やすくなることで、結果として、自分のことを知ってもらえるようになったり、さらに思考を深めることができるようになることにもつながるのです。ぜひこの思考法を意識して、コミュニケーション力を上げてみてください。
自己分析ができ、自分の人生の軸を見つけることができる
この理由に関しては、過半数の人が、就職によって自己分析をしてきているので、理解しているのではないかと思っています。
上に挙げた、「自分の弱点を探す」や「就きたい仕事を探す」の例がまさにそれです。
抽象化の対象を自分の嗜好や言動にあてはめることをすると、自分の本質を見極めることができます。結果として、それが自分の就きたい仕事を探すことに使うことができるのです。
自分と向き合わずに人生の軸が決まっている人と言う人は、この世の中でごくわずかだと思っています。たとえば皇族や歌舞伎の世界がそれだと考えています。
多くの人は大学生くらいまでに経験したことが自分の中で大きな財産になっていることが多いので、就職の時に、一つの節目として、自己分析を行うことはとても大事であると感じます。
しかし一方で、自己分析は就活生がやるもので、社会人には必要ないんでしょ。と言われたら、絶対にそんなことはありません。と答えます。この自己分析は、人生のどのステージの人にも取り組み続けるべきだと私は思います。つまり、社会人になってからでも遅くはないと思っています。それは、社会人になってからの方が、いろんな価値観に出会い、いろんな刺激をうけ、自分の人生の軸と言うもの変わりうるからです。
実を言うと私自身もまだ自分の人生の軸はよくわかっていません。
人生の軸ややりたいことなんで案外自分でもよくわかっていないものです。それは自分自身の軸が、1軸なのか、2軸なのか、3軸いやもっと6軸あるのかとか。これは人の価値観によって様々であると思います。
自己分析をして、一つの軸を見つけたからといって、それに盲目的に従うばかりになり、もう一つの自分では気づいていない軸から離れていかないようにすることが大切です。よって、出た結果を信じ切るあまり、自分に暗示をかけてしまうことの危険性には気を付けておきたいです。
ここで言いたいのは、自己分析をやらないほうがよいということが言いたいわけではなく、1つの結果のみを鵜呑みにせず、自己分析を続けることが大事であると言うことです。
付属ですが、例えば私が、面接官なら、
「私の人生の軸はこれです!なぜならば、、」という人よりも、
「私の人生の軸は3つあります。最も優先している軸はこれです。なぜならば、、」と言う風に、軸同士を比較している人の方を採用したいと感じます。それは、人生の軸が一つだけ挙げた人は、そのほかの価値観と比較した結果一つになったのか、それとも自己分析が少ないだけなのかが判別がつきにくいからです。もちろん1つであることが悪いとは言いません。就活では、その熱量や努力をいかに伝えられるかが大事であると思います。
最後になりますが、自分の人生の軸が見つかれば、判断に悩んだり、落ち込んだり、失敗したときも自分の軸に振り返ることができます。そうすれば、人生のコンパスを持っているので、安心して、社会という大海を航海することができます。ぜひこの思考を繰り返して、自分が何者か、何者になりたいのか、を理解してみて、心の思うままに生きられるようになってください。
私の哲学になった理由は新入社員時代の悔しい経験から
ここまでこの哲学について私が強く語るには理由があります。その話を少し。
これは私が、今の職場に配属されて1か月頃の話です。とある領域の将来技術について話し合う会議に、新人としてたまたま参加させてもらう機会がありました。
内容は、今後の将来技術のロードマップを確認するというものと、新人の私たちから、経験談を聞き、そこから将来求められそうな技術を考え出すというものでした。
先に始まったロードマップについてはなるほどなるほど~という感じで終わりました。
そのあとに始まった将来技術のデザインシンキングでは、「~についてどんな経験をしてきた?」や「~について楽しかったところやつまらなかったところはなに?」といった質問に対して、具体的に回答をするということをしていました。
すると、その会議に出席している人たちからは「なるほど~若い人たちの感性は~な感じなんだね。」「そしたらこんなものを提案したらおもしろそう」という話が次々と飛び交っていきます。
もちろん私もその経験談を話すだけではなく、どんなものが将来あったらおもしろいと思う?という質問が飛んできました。
そこでは、私が話した体験談から抽出して考え出せたアイデアというよりかは、それも私が雑誌やネットで見聞きしたようなことしか言うことができませんでした。
その会議に出ている人たちは、私の経験談から抽出した、若い人たちの感性に則ったアイデアを次々とだすのに、私はそうすることができず、結果として会議に積極的に参加することができなかったのです。
それはそれはとても悔しい経験でした。管理職クラスの人たちに囲まれ、数個の経験談しか話すことができない自分がとてもみじめに感じました。そしてこんな自分がこの場にいることがとても申し訳なく感じました。
しかし結果として、将来技術を考えるためには、このような抽象化のスキルが必要になるんだ!と学んだとても良い機会となりました。この経験から、この「1を知って10を知る」ということの大切さを身に染みて感じたのです。
まとめ
「1を知って10を知る」とは、1の具体的事実から抽象的な概念を抽出し、その概念に当てはまる、より多くの具体的事象を把握することである。ただし、最も大切なのは抽象化のプロセスそのものである。
私は上述したように、この抽象化スキルは想像力が求められるこれからの世の中で、特に就活生や今のビジネスパーソンに必須となるものであると考えています。仕事だけでなく普段の生活からこの抽象化を意識してみると、思考能力もぐっと高まることでしょう。
以上、この哲学が皆さんの人生を少しでも豊かにしてくれたら幸いです。
byキャブたつ